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福岡高等裁判所 昭和29年(ネ)645号 判決 1954年12月09日

控訴人 武石政右衛門

右代理人 菅野虎雄

被控訴人 国

右代表者 小原直

右指定代理人 矢野弘

被控訴人 稲永要

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及理由

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人国は控訴人に対し金千九百円を受取ると引換に金三十九万六千円を支払うべし、被控訴人稲永が被控訴人国から右金三十九万六千円を受取る権利のないことを確認する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とする」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、農地法第十五条が旧自作農創設特別措置法第二十八条に代るものとするも、国が買収すべきものなることは同様であつて農地法第八十条により買収前の所有者に先買権がある。このことは土地収用法第百五条第百六条の手続の返還義務買受権に由来するものであつて、末端に拘泥して解すべきものではないと述べた外原判決の「事実」に示すとおりであるからこれを引用する。当裁判所の判断は、後記の理由を附加する外原判決の「理由」に示すとおりであるからこれを引用する。

控訴人は被控訴人稲永が本件農地を自衛隊用地として被控訴人国に売却したことは、その所有者たる被控訴人稲永及びその世帯員以外の者が耕作の用に供したときとして農地法第十五条の規定により国がこれを買収したことになる旨主張するが、旧自作農創設特別措置法第十六条の規定により国から売渡された農地であつてもそれが農地法の規定上(第三条及び第五条)有効にその所有権が移転せられた場合にはその所有者及びその世帯員以外の者が耕作に供したときというを得ないものと解すべきであるから、同法第十五条の規定により国がこれを買収する場合には該らないものといわねばならない。のみならず同条の規定により国が買収した農地は同法第三十六条の規定により売り渡されるのであつて、特に同法第八十条の規定により買収前の所有者に売り払われなければならない農地中には右第十五条の規定により買収された農地は含まれていない。つまり同法第十五条の規定により買収せられた農地は買収前の所有者に必ず売り渡し又は売り払われなければならないことにはなつていない。それで本件農地を被控訴人稲永が被控訴人国に自衛隊用地として売却したことは同法第十五条の規定により国が買収すべき場合に該らないのであるが、仮りに同条の規定により国が買収すべき場合に該当するものとしても、これによつて買収せらるべき本件農地を必ずしも買収前の所有者たる控訴人に売り払わるべきものとは限らないのであるから、控訴人が本件農地を自己に売渡し又は売り払わるべきことを前提とする本訴請求は前叙の理由によつてその失当であることが明である。

よつて本件控訴を棄却した原判決は正当であつて本件控訴はその理由がないから民事訴訟法第三百八十四条第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野田三夫 裁判官 中村平四郎 中村荘十郎)

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